2005.06.29

■台湾アイドルのムックがまたひとつ■

ASIEN第251号

 韓流ブームの跡を追いかけるようにして、このところ華人アイドルのムックが次々に出版されています。『恋してるっ!! 台流スター』(角川書店)が第三冊目まで出ているのをはじめ、『台流エンタメ・コレクション』(キネマ旬報社)、『アクターズ・スタイル台湾』(竹書房)などなどが次々に発売されました。そして今週(六月二十七日)発売になったのが『アジアン台風』(日本文芸社)。「アジアン」とはいえ、紹介されているのはすべて台湾のアイドル。韓国からの流れで「韓流」なら、その向こうを張って台湾からの風で「台風」……と。

 で、このムックの中で、とりわけウェイトがかけられているのがやはりF4。現地台湾では、正直アイドルとしての「旬」を少々過ぎてしまった彼らですが、日本でのブレイクはまだまだこれから。四人揃っての来日となった四月二十七日の記者会見を筆頭に、言承旭(ジェリー・イェン)主演ドラマ『白色巨塔』の制作発表会見や、四月の来日に先立つ周渝民(ヴィック・チョウ)の単独来日、朱孝天(ケン・チュウ)の香港ライブや大阪でのイベント、呉建豪(ヴァネス・ウー)と周杰倫(ジェイ・チョウ)が共演した映画『自行我路』の話題など、記事が盛りだくさんです。

 このほかにも、陳伯霖(チェン・ボーリン)、陶喆(デビット・タオ)、許紹洋(アンブロウズ・シュー)、邱澤(ロイ・チウ)といったおなじみの顔ぶれから、これまで日本への紹介はまだまだ少なかった郭品超(ディラン・クオ)、羅志祥(ショウ・ルオ)、ダンカンこと周群達(チョウ・チュンダー)、彭于晏(エディ・ポン)らのインタビューも充実。本の作りやデザインは先行している類似本とあまり変わらない雰囲気ですが、より通好みというか、これから大きくブレイクしそうなアイドルを率先して紹介しています。

 最近のファンは、インターネットを駆使してかなり細かい情報までリアルタイムに収集していますが、それでも言葉の壁などで多少のもどかしさを感じていた人も多いはず。そういったファンには読み応えのある記事が多いと思いますし、また大判の写真やポートレイトはこうしたムックならではの楽しみでしょう。はたしてこの「台流」いや「台風」、本当に「韓流」に匹敵する勢いに成長していくのでしょうか。(銭衝)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

■周華健●四軒目のレストランに投資■

ASIEN第250号+聯合報

 このところコンピレーション・アルバムなどへの参加ばかりで、オリジナルのアルバムはとんとごぶさたの周華健(ワーキン・チョウ)。最近は実業家としての仕事も忙しいようで、自ら投資した広東料理店「粤華軒(Wakin's kitchen)」一号店・二号店・三号店(いずれも台北周辺です)に続き、こんどは友人たちと共同で出資した香港飲茶専門店「潮樓」を台北市東区にオープンさせました。

 このあたりは呉宗憲(ジャッキー・ウー)がオーナーのレストラン「糖朝」を始め、有名どころの香港料理店が軒を連ねる一帯。あえてそうした立地を選んだワーキン、これまでの経営ノウハウをベースにより一層の事業の拡大を狙う……と思いきや、これまでのレストラン経営がそれほど大当たりしているわけではないそうです。本人は「ずいぶん大盤振る舞いをしてきたからね。どれだけ『持ち出し』になっているか計算したことはないけれど」と、やや自嘲気味。今回の投資については「レコーディングで遅くなった日なんかに、ちょっと寄って夜食がつまめる店があったらいいなと。それに母親が台湾にやってきて一緒に住むことになったから、香港の味が恋しくなったらいつでも来ることができるしね」……ということなのだそうです。

 レコーディングの帰りに立ち寄る、ということは新譜の発表も間近? 確かに現在、ニューアルバムの制作にも忙しい日々を送っているとのことですが、具体的な発売の日取りはまだ決まっていません。「友人からは新譜の発表よりレストランの開店間隔のほうが短いじゃないかとひやかされるんだ」と笑うワーキン。ううむ、あんまり笑えない自虐ネタですな。(銭衝)

「粤華軒(Wakin's kitchen)」については、オフィシャルサイト
http://www.wakin.com/ の“fortune”から“kitchen”をごらんください。

「台北ナビ」にも情報があります。
http://www.taipeinavi.com/food/restaurant.php?id=149

| | Comments (0) | TrackBack (0)

■朱孝天●大陸での撮影に戦々恐々■

ASIEN第249号+聯合報

 北京で映画『遠東国際大審判』の撮影に参加している朱孝天(ケン・チュウ)、本人と周りのスタッフがいま最も気を使っているのは、宿泊場所のセキュリティ。というのも昨年、ドラマ『天空之城』の撮影中に共演の李冰冰(リー・ビンビン)との親密なツーショットがマスコミに流れ、大々的に報道されてしまったという苦い経験があるためです。

 このときは北京の五つ星のホテルに宿泊していたのですが、あろうことかホテル側が監視カメラの映像を横流ししたとかで、すでに裁判にまで発展しています。朱孝天は今回、ホテルではなく一般の住宅を借り切って宿泊場所にあてました。もちろんそれがどこなのかは「最高機密」なんだそう。「たとえ六つ星だろうと、一般住宅のほうがいい」と、前回の騒ぎにかなり懲りた様子です。

 先日も上海でドラマ『八大豪傑』の撮影に臨んでいた陳冠希(エディソン・チャン)が、深夜ファンの女性にホテルの部屋まで押しかけられるという騒ぎがあったばかり。大陸での人気のほどがうかがえますが、部屋に押しかける「直接行動」の他にもひっきりなしに電話がかかってきたりしたそうで、これはもうストーカー行為と紙一重。ファンの自重を求める声とともに、ホテル側の受け入れ態勢にも批判が高まっています。

 さて朱孝天の参加しているこの映画、題名からすると日本で言うところの「極東軍事裁判」をテーマにしているようですが、詳細はまだあまりネット上に流れていません。脚本を担当しているのは『笑傲江湖』などの作品で知られる黄建中(ホァン・ジェンジョン)監督のようで、朱孝天の役どころは華人記者だそう。日本人記者を演じる林煕蕾(ケリー・リン)と恋に落ちるという設定のようです。ほかに曽志偉(エリック・ツァン)、劉松仁(ダミアン・ラウ)らが共演、さらには陳道明(チェン・ダオミン)や、日本の高倉健まで参加という噂が流れていますが、さて……。いずれにしても朱孝天にとっては、これまでとはかなり趣の異なる作品になりそうですね。(銭衝)

| | Comments (0) | TrackBack (1)

■三和電影公司●台湾ニューウェイブの牽引役■

ASIEN第248号+聯合報

 昨年、映画『十七歳的天空(Formula 17)』でヒットを飛ばした陳映蓉(チェン・インロン)監督が来月から新作映画『Catch』をクランクインさせます。主演は『十七歳的天空』と同じ楊祐寧(トニー・ヤン)、ヒロインには「ゴージャス系」タレント(笑)の天心(ティエン・シン)が決まっています。

 陳映蓉監督は若手の映画監督たちと映画の自主制作会社「三和電影公司」を運営しており、最近關穎(グァン・イン)や張大[金庸](ジェイソン・チャン)らが主演したスリラー映画『宅變』がクランクアップしたばかり。なかなか活発な活動を続けています。

 『十七歳的天空』は台湾のゲイ・シーンをテーマにしたコメディでしたが、今回の『Catch』はがらっと趣が変わり、警察と裏社会の駆け引きという『無間道(邦題:インファナル・アフェア)』シリーズを彷彿とさせるプロットのよう。楊祐寧はチンピラの役を演じます。

 この「三和電影公司」では、これらの作品の他にも若手の李芸嬋(リー・ユィンチャン)監督のファンタジー・コメディ『人魚[几/木] [几/木]』という作品をこの夏にクランクインする予定。こちらの主演は日本でもおなじみの徐若瑄(ビビアン・スー)です。この作品は実写にアニメを合成したかわいらしい作りになるもよう。台湾映画のニューウェイブを引っ張るこの映画制作会社、今後の展開が楽しみです。(銭衝)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

■李[王文]●実業家と結婚だ!■

ASIEN第248号+聯合報

 小S結婚のニュースにわく台湾芸能界、一方で李[王文](ココ・リー)婚約の話題でも盛り上がっています。これはつい先日、香港でCOCO自身の口から語られたもの。それによると今年の初めに恋人のBruce(香港で紡績業などを営む実業家だそうです)氏から求婚され、十カラットのダイヤの指輪を贈られたのだそうです。一説には時価一千万台湾ドル(約三千五百万円)の指輪とも言われており、COCOらしく何ともゴージャス。現在は仕事の予定が立て込んでいるため、結婚式は来年までお預けになります。

 COCOの姉がメディアに語ったところによると(どうしてお姉さんが語るのかはわかりませんが)「彼女が好きな熱帯の海岸で、華人の伝統にはとらわれないカジュアルなスタイルで結婚式をしたい」と希望しているんだとか。

 デビュー以来、張瑞哲(ジェフ・チャン)、連勝文(リェン・ションウェン……この人は国民党・連戦主席の息子ですな)、王力宏(ワン・リーホン)などとの関係が騒がれてきたCOCO。最後に彼女を射止めたのは友人の紹介で出会ったという実業家でした。このBruceさん、COCOとは年齢が十歳離れているいて、十歳と七歳の二人の娘がいます。この二人の娘とも非常に仲がいいというCOCO、結婚後もすぐに子供を産むつもりはなく、また芸能界を引退することもないと明言しているそうです。(銭衝)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

■房祖名●戴佩[女尼]のコンサートにわざわざ訪台のわけは?■

ASIEN第246号

 房祖名(ジェイシー・チェン)、今度のお相手は戴佩[女尼](ペニー・ダイ)? こんなニュースが《聯合報》の芸能面トップに載っていました。房祖名といえば映画『千機變II 花都大戰』で銀幕デビューを果たした、あの成龍(ジャッキー・チェン)の息子。ちょっと面長なそのルックスは、あまりジャッキーに似てはいませんが。

 房という珍しい名字、実はジャッキーの父方の名字なんだそうです。父方……って、華人社会では一般に、子供は父方の姓を名乗るのが普通だからそれがどうしたの、と言われそうですが、ファンのみなさまはよくご存じのようにジャッキーの本名は陳港生。それで息子のジェイシーも陳祖名と名乗っていたのです。ところがジャッキーの父、つまりジェイシーのおじいさんは元々房姓だったということで、ルーツに戻ったわけですね。本名よりさらに本名らしさを追求したというところでしょうか。

 えー、ややこしい話は脇に置いて、息子のジェイシー。あの大御所ジャッキー・チェンの息子ということで、何かと引き合いに出されるのを疎ましく感じているのではないかと思いきや、案外そうでもない様子。昨年、その名もズバリのアルバム『房祖名』で歌手デビューした際も、何かとジャッキーの息子であることを強調していました。まあ、育ちの良さからそういった外野の声には鷹揚に構えていられるのかもしれません。

 これまでにもTwinsの鍾欣桐(ジリアン・チュン)や梁靜茹(フィッシュ・リャン)などとも恋仲の噂があったジェイシー(といってもメディアが騒いだだけですが)、今回話題に上ったのが先日初めてのコンサートを開いたばかりのペニー。デビューからもう六年近く経ち、シンガー・ソングライターでもある彼女が初めてのコンサートというのも驚きでしたが、ともかく台湾で開かれたこのコンサートにジェイシーがわざわざ香港から駆けつけたのだそうです。でもって閉幕後の打ち上げにも参加したことからメディアに騒がれているとか。

 ふうん、たったそれだけで騒ぐのか? と思いましたが、メディア側にはそれなりの「傍証」があるのだそう。それはペニーがコンサートのステージで激しい動きから何度か歌えなくなり、さらには冗談で「もう歌はやめるわ」と言ったのが物議をかもしたのですが、そんなこんなのコンサートに対してジェイシーが「すばらしかった! 百点満点!!」と手放しで賞賛したから……って、おいおい、それだけ?

 実はジェイシー、近々セカンドアルバムを出す予定です。実は個人的に「親の七光」というのに反発があって(そんなこと言っていると、かなり多くのアーティストがその「コード」に引っかかっちゃうんですが)、ファーストアルバムはあまりまじめに聞かなかったのですが、今度はもう少し身を入れて聞いてみようと思います。七光だって一種のプレッシャー。それをはねのけて何かを表現するというのも大変なことですから。でも……今後ジェイシーがカンフー映画をやり出したりなどしたら、も~速攻で見捨てますからね(笑)。(銭衝)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.05.11

■鄧麗君●没後十年 生前大陸に寄せた想いと反発■

ASIEN第245号+聯合報

4163668403 一九九五年五月八日、鄧麗君(テレサ・テン)がタイのチェンマイで客死してから今年でちょうど十年。台湾は台北縣金山郷にある彼女のお墓には、今年も多くのファンが訪れました。お墓を囲みテレサを偲んで交わされる言葉には、台湾國語(北京語)だけでなく広東語も多く聞かれ、また大型連休を利用して来たとおぼしき日本人の姿もあちこちに。没後十年を経ても、変わらぬ人気のほどがうかがえます。

 タイで死亡が確認された際、テレサが所持していたのはベリーズ(カリブ海の小国です)のパスポートでした。彼女の弟によると、彼女は生前このパスポートを使って大陸にも行きたいと願っていたそうです。「一度上海の外灘(バンド)を見てみたい」というのがその願いだったようですが、どうしても大陸の土を踏む決心がつかず、とうとうその願いをかなえることなくこの世を去りました。

 台湾では早くから“軍中情人”“愛國歌手”と呼ばれた彼女は、大陸の共産党政権に対する反感が強かったと言われています。大陸側でもテレサの歌を“靡靡之音(退廃的なメロディ)”と形容するなど、日本での「演歌歌手」というイメージとはかなり趣を異にする、彼女特有の政治的な立場がありました。とはいえ改革開放が始まった八十年代初頭、大陸では「昼は大鄧(鄧小平)の話を聞き、夜は小鄧(テレサ)の歌を聞く」と言われたほど彼女の歌は大衆に愛されていたのです。

 そうした人気を受けて、大陸でのコンサートが何度も計画されましたが、そのたびにテレサは首を横に振っていました。「大陸でコンサートを開いても、聞きに来るのは共産党の幹部ばかり。私の歌を愛してくれる一般の人々には届かない」というのがその理由。一九八四年に香港のホンハムでコンサートが開かれた際も、会場に軍服姿の共産党幹部が多く座っているのを見るや『中華民國頌』という曲を歌って、軍服の一団が席を立ったというエピソードも残されているほど。

 歌手デビュー二十周年を迎えた一九九〇年には、天安門広場でビデオコンサートを開く計画もありました。これはテレサが「中国四大美女」の楊貴妃・西施・貂嬋・王昭君に扮したMVを制作し、それを無料で上映するというもの。無料ならば一般の人たちも聞くことができるとテレサもこのプロジェクトに乗り気だったようですが、一九八九年の天安門事件で計画はあえなく頓挫してしまいました。

 没後十年を経て、今年は彼女を回顧するさまざまな動きが見られます。桂林では香港・赤柱(スタンレー)にある生前の住居をそのまま模した記念館が建設されていますし、この四月にはDVDとCD、それに書籍がセットになった『テレサ・テン歌姫伝説』が発売されました。また評論家の有田芳生氏が三月に上梓した『私の家は山の向こう――テレサ・テン十年目の真実』も現在翻訳が進められており、この八月にも中文版が出版される予定です。(銭衝)

| | Comments (0) | TrackBack (1)

■孤戀花●ドラマと映画が同時に公開される話題作■

ASIEN第244号

scene02 昨年から一年近く撮影が続けられてきた、曹瑞原(ツァオ・ルイユァン)監督の《孤戀花》。テレビドラマ版と映画版が同時並行で制作されるという試みに注目が集まっていましたが、この春にようやく完成、ドラマ版は今月中旬から放映が始まり、映画版も来月には公開の運びとなりました。

 《孤戀花》は台湾の作家・白先勇(バイ・シェンヨン)の代表作。曹瑞原監督は二年前にも白先勇の《孽子》を台湾の公共テレビ(NHKにあたる)でドラマ化して好評を博しています。《孤戀花》は二十年前に一度映画化されており、今回は再制作になりますが、実は《孽子》もかなり昔に映画化されていたものをリメイクした作品。白先勇の小説作品がいかに台湾では長く読み継がれ、人気があるかを物語っています。

 キャストは、これも《孽子》でその熱演が好評だった[度-又/尺]宗華(トゥオ・ゾンホァ)が参加しているほか、李心潔(アンジェリカ・リー)と袁詠儀(アニタ・ユン)の競演も話題です。とくに李心潔と袁詠儀はお互いに愛し合う仲……なんだそうで、同性愛をテーマの一つにした《孽子》同様、この作品もまた広く注目を集めそうです。

 ロケは上海と台湾でそれぞれ行われたようですが、上海では撮影中に録音技師が軍靴の響きと日本語の号令を聞くという「怪異現象」があったとか。この作品は第二次世界大戦末期から一九六〇年代までの歴史が背景にあり、日本統治時代の台湾・日中戦争・国共内戦などが絡んだストーリー展開になっています。そんな背景もこの「怪異現象」が真実味を増す結果となったのかもしれません。

 《孤戀花》は台湾ではよく知られた古い曲で、《孽子》でもその哀愁漂うメロディーが効果的に使われていました。今回のドラマと映画でも、《孤戀花》のほか《夜上海》《魂榮舊夢》《黄昏故故郷》《港都夜雨》など、オールド上海やその後の時代をしのばせる数々の名曲が使われており、台湾でも一定年齢以上の世代には懐かしいテイストに仕上がっているようです。すでに放映が始まっているテレビドラマ、いずれ《孽子》と同様にDVD化されるといいですねえ。(銭衝)

レトロな風情が美しい公式サイトはこちら……http://www.tsaofilms.com/

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.04.20

■林俊傑●サードアルバム《編號 89757》は未来風■

ASIEN第243号

74 JJこと林俊傑(リン・ジュンジエ)のサードアルバム《編號 89757》を聞きました。昨年のセカンドアルバム《第二天堂》でも、《江南》をはじめとするヒット曲を数多く世に送り出したJJですが、一年を経ずして発売された今回のアルバムもハイレベルな仕上がりになっています。

 《編號 89757》というのはロボットの番号。アルバムタイトルにもなっているこの曲はウィル・スミス主演の映画『アイ、ロボット』にインスピレーションをうけて作られたとか。西暦3005年、アンドロイドがコンピュータ・ウィルスに感染し、ご主人様を愛してしまうといった設定なんだそうで。そういえばアルバムについている歌詞集の写真も、JJの眼はみな機械的なアンドロイドふう。「心を持ってしまった機械」というテーマは決して目新しいものではありませんが、そこはそれ、JJならではの音楽性の高さで聞かせてくれます。すべてが自身の作曲。歌のうまさはあいかわらずです。

 アルバムがそうしたコンセプトで貫かれているため、今回はどちらかというとかなりクールな印象の楽曲がそろっている感じがします。個人的には前作のアルバムに収められていた《豆漿油條》のようなほのぼのとした曲も好きなのですが、もともとこの人は未来的なイメージの楽曲が好きなようですね。いくつかの楽曲のテイストはファーストアルバムの《就是我》にそっくりだったり、《就是我》の一部をコラージュ的にそのまま使っていたりして、この路線は今後も頑固に追求していくのでしょう。

 他にも《盗》という曲が収められていて、これは先にレコード会社との間で発生したちょっとしたトラブルに基づいています。このトラブル、セカンドアルバムで大ヒットした《江南》を、JJ側の許可を得る前にレコード会社が自社所属の歌手にカバーさせてしまったというもの。すでに決着ははかられているようですが、海賊版を痛烈に皮肉ったとおぼしきこの曲できっちりお返ししているあたり、JJもなかなか骨がありますね。

 このアルバム、初回プレス分のみ「89757特製ネックレス」がついています。けっこうずっしりと重い金属製。私は別にいらないけど……(笑)。(銭衝)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.04.14

■台湾人は年に一本しか映画を見ない?■聯合報

ASIEN第242号

 台湾で映画館に行くと、ときにロードショーが始まったばかりなのに場内に観客が数名などということもめずらしくありません。ハリウッド映画はまだしも、台湾の国産映画などは目も当てられない状況もしばしば。「これでやっていけるの?」と人ごとながら心配になってしまいます。台湾の“公平會(行政院公平交易委員會の略。日本の公正取引委員会にあたる)”が最近まとめた統計によれば、台湾人が一年間に映画館へ足を運ぶ回数は、平均で一回にも満たないそう。特に中年以降の観客動員数が極端に低いという結果が出ています。

 斜陽が叫ばれて久しい台湾の映画産業ですが、興行成績で見れば実はそれほど大きな変化はなく、ここ十年ほどは毎年二十億から二十五億元のレベルを維持しています。ただしそのうち九割以上がハリウッド映画による売り上げ。しかも映画はかつてのように幅広い世代に楽しまれる娯楽ではなくなっており、主要な観客は十八から三十五歳の青年層に限られてきたという調査結果もあります。

 台湾の映画産業には、これまで三つの波が押し寄せてきたといわれています。最初は一九六〇年代に入って本格化したテレビ放送。次は八十年代以降にビデオが登場し、それにともなって海賊版が出現したこと。そして九十年代に始まったケーブルテレビが第三の波となって映画に影響を与えました。

 もちろん、映画産業界も手をこまねいてばかりいたわけではありません。九十年代に入って、映画のリプリント数と上映館数に対する制限が緩和されたことによりショッピングセンターなどのスポットに併設される映画館が急増。昔からの映画館に取って代わる存在となりました。また、一九九八年には台北に本格的なシネコンである“華納威秀影城(ワーナービジッジ)”がオープン、初年度で百万人の観客動員を記録。その後台北だけでなく台湾各地にシネコンが登場しブームとなりましたが、それでも経営は順風満帆とは行かないようで、昨年八月には“華納威秀”の経営権が香港のゴールデンハーベストに移っています。

 ゴールデンハーベストは「マレーシア人や香港人は年平均で台湾人の二~三倍の映画を見ている。いい作品といい映画館を提供していくことで、まだまだ潜在的な発展の可能性が残されている」として台湾映画業界の今後に期待をかけています。ただ、伝統的に家族のだんらんをとても重んじるのが台湾の人たち。わざわざ映画館に出かけ時間を区切って「作品鑑賞」するより、家でソファに寝っ転がって気軽に映画を楽しみたい……そんなニーズが興行成績の頭打ちとなって現れている形です。またシネコンは既存の映画館よりチケットがかなり割高なことも課題。多くの娯楽コンテンツがひしめく現代にあって映画がどう生き残っていくのか、台湾に限りませんが、いずこも同じ問題を抱えているようです。(銭衝)

| | Comments (2) | TrackBack (0)

■石康軍●デビューアルバムの「売り」はその声域の広さ■

ASIEN第241号

cover 石康軍(ジョーンズ・シー)のデビューアルバム《火光》をご紹介します。シンガポール出身の石康軍は、李偉菘(ポール・リー)と李偲菘(ピーター・リー)のもとで孫燕姿(ステファニー・スン)らと一緒に歌を学んだ「同級生」。十代の頃から、アルバイトで稼いだお金はほとんどカラオケに費やしていたという大の歌好きで、シンガポール国立テマセク理工学院で建築やデザインを学ぶかたわら、ひたすら修行に励んできたのだとか。十年近くの下積みを経て、このたびめでたくデビューとあいなりました。

ちゃらんさんからご指摘をいただきました。アルバムタイトルは《火花》ではなく《火光》です~!

 一見線の細そうなルックスながら、歌うのはなかなか力強いブリティッシュ・ロックっぽい雰囲気の楽曲。あまり自分で曲を作らないようですが、今回のアルバムに収められた多くの曲に自分で詞をつけています。彼の「売り」はその幅広い声域なんだそうで、オフィシャルサイトによれば「十九度」とか。二オクターブ半近いということですか。そのすごさになかなか実感がわきませんが、手元の資料によると、美空ひばりの『河の流れのように』がちょうど十九度の音域が必要で、ふうむなるほど確かに容易なことではなさそう。

 アルバムの最初におさめられている《愛中飛行》は、石康軍自身が敬愛する信樂團(shin)のヴォーカル・阿信(アシン)とのデュエット。またアルバムタイトルにもなっている《火光》は、得意の高音を活かしたサビが印象的です。そして《黒夜過後》は自分で作曲したナンバーで、これもファルセット(裏声)を駆使した、技術を感じさせる一曲です。ただし、アルバム全体としてはまだまだ小作りな印象。歌の実力を活かしてもっといろんな冒険をしたらいいのになあと思いました。

 アルバムには歌詞カードの他に三十ページほどのフォトアルバムがついており、石康軍が描いたスケッチが多数おさめられています。正直言ってあんまりうまくないんですけど(笑)、さすが建築を学んだだけあって、パース(遠近感)のしっかりした絵です。ちょっと「めるへんちっく」で、高校生がよく読む恋愛小説に出てくる挿絵みたい。石康軍は現在、カジュアルブランド“HANG TEN”のイメージキャラクターをつとめています。これはやはり同ブランドの広告に昨年から引き続き参加している徐若瑄(ビビアン・スー)が「ぜひ彼を使って!」と強く推薦したのだそう。そのかいもあってか、このデビューアルバム、台湾では現在売り上げで上位にランキングしています。今後の更なる飛躍に期待しましょう。(銭衝)

オフィシャルサイトはこちら……http://www.avex.com.tw/jones/
HANG TENのサイトはこちら……http://www.hangten.com.tw/

| | Comments (0) | TrackBack (1)

2005.03.24

■周杰倫●「愛国主義歌曲」選定に漂う違和感■

ASIEN第240号

 周杰倫(ジェイ・チョウ)の《蝸牛》が「愛国歌曲」に――。先週台湾で、非常に地味な内容ながらひときわ目をひいたニュースがこれ。上海市の教育委員会が中学生に対して推薦する百曲の「愛国主義歌曲」、その一つに選ばれたというのですが、折しも大陸の全人代における、台湾独立を阻止するためには武力行使も辞さない旨を明記した「反国家分裂法」の採択と相まって、台湾ではかなり話題になりました。最初このニュースにテレビで接した際、私はテロップの《蝸牛》をなぜか《鬥牛》と見間違えてかなりとまどいました。周杰倫のファーストアルバムに収められたあのラップもクールな《鬥牛》が「愛国主義歌曲」?……と。

 《蝸牛》はアルバム《范特西》の特別バージョン《FANTASY + PLUS》についてくるEP盤に収められている、周杰倫作詞・作曲の作品。確かもともとは許茹芸(ヴァレン・シュー)や齊秦(チー・チン)・動力火車(パワーステーション)・熊天平(パンダ・ション……最近とんとお見かけしませんが)らに提供した台湾基金会のチャリティ・ソングだったはず。一歩一歩前を向いて歩む意志をカタツムリになぞらえた歌詞は、なるほど健全で「愛国歌曲」に選ばれるのもわからなくはありません。それでも漂ってしまうこの違和感はいかんともしがたいものがありますねえ。

 この「愛国歌曲」にはほかに劉徳華(アンディ・ラウ)の《中國人》や、今年の春節聯歓晩会で成龍(ジャッキー・チェン)が勇ましく歌っていた《真心英雄》なども選ばれています。こちらは何となく得心がいくラインナップ(笑)。ただ一ファンとしては、アーティストの個人的な心情や政治的立場はともかく、ポップスの楽曲を政治とあまり絡めてほしくないですね。私見ですが、劉徳華や成龍はともかく、周杰倫がこういう扱いを喜ぶとは思えませんし。まあ上海市教育委員会からすれば、んなこと「知ったこっちゃない」んでしょうけれど。(銭衝)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.03.16

■辦桌二人組●人情味あふれる若手台湾語デュオ■

ASIEN第239号

我的阿娜達 台湾語で歌う男性デュオ“辦桌二人組”四枚目のアルバム《我的阿娜達》が発売になりました。台湾でもヒットチャートのほとんどは、いわゆる“港台(香港と台湾)”の北京語ポップスが占めているなかにあって、CDショップでも売り上げの上位に食い込めているのは彼らだけかもしれません。

 もちろん五月天(メイデイ)や、最近ベストアルバムを出した張宇(フィル・チャン)をはじめ、台湾語の曲に愛着を持っているアーティストは多いですし、台湾には他にも様々な年代の台湾語歌手がたくさんいます。それでもこうして台湾語歌手が“港台”ポップスに混じって売り上げで健闘している存在はそれほど多くはなく、この「二人組」はとても貴重な存在といえるでしょう。

 阿傑こと馮韋傑(パン・ウィッケ)と阿龍こと龍力維(リゥ・ラッゥイ)の“二人組”、彼らがデビューしたのは二〇〇二年のこと。当時進められていた旧高雄駅舎(日本統治時代の建築です)の移設工事とタイアップで、《再會啦!車站》というアルバムを発表、一躍話題となりました。現在の行政院長(日本の総理大臣に当たる)である謝長廷氏が当時の高雄市長で、このアルバムの企画にも参加したそうです。美しいハーモニーの男性デュオということで、デビュー当時は台湾語版の“無印良品”などと評されました。

 ユニット名の“辦桌”というのは台湾で冠婚葬祭時によく見かける「仕出しサービス屋さん」のこと。道路脇や路地を借りてウナギの寝床のようなテントを張り、テーブルと椅子を並べ、食事の用意をし、必要に応じて宴会を盛り上げる藝人さんの手配までする……。二人はともにこうした家業を営む両親の元で育ったのだそうです。南国台湾の風情色濃いこうした“辦桌”業、二人の歌に流れる「人情味」はそんな生い立ちに育まれたものなのかもしれません。

 「人情味」と書きましたが、そう、このユニットの楽曲はどちらかというと、いやかなり素朴な、時に演歌に近い雰囲気を持っています。今回のアルバムタイトルである《我的阿娜達》、《阿娜達》は「アナタ」と発音し、これは台湾語に今も多く残されている日本語のひとつ。こうした言葉を折り込むことで、なんとも土着的なノスタルジーあふれる楽曲作りを目指しているようです。私は台湾語をほとんど解しませんが、それでも彼らの歌を聴きながら歌詞集に目を走らせていると、とてもほのぼのとした温かいものを感じます。

 このアルバムには、収められた十曲のほかにいくつかの曲についてカラオケ版がついています。きっと宴会などでも大いに利用されていくのでしょうね。なにしろ台湾のみなさん、台湾語の歌にあわせて音頭を取っているときは、明らかに北京語より体温が上がっている、そんな感じがするかたたちですから……。(銭衝)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.03.10

■阿桑●清冽な雰囲気をたたえたセカンドアルバム■

ASIEN第238号

寂寞在唱歌 阿桑(アサン)のセカンドアルバム《寂寞在唱歌》を聴きました。冬から春にかけて朝晩はまだまだ冷え込むことも多いこの時期にぴったりの、清冽な雰囲気をたたえた一枚になっています。台湾の各種メディアでは、声の質も表現力も前回より格段にアップしたと評されている今回のアルバム。確かにこの人のかすかにハスキーさを感じる歌声は、ついついじっくり聴き入ってしまう魅力を持っています。

 今回のアルバムで特徴的なのは、シンプルかつ静謐な雰囲気で全体がまとめられていること。収められた十の楽曲はどれもピアノや弦楽器など最小限の伴奏がついているだけで、およそデコラティブなアレンジとは無縁です。アルバムジャケットからして、“預購盤(先行予約時に頒布されるデモ版CD)”かと見まごう薄い紙製の簡便なスタイル。歌詞集も黒とえんじ色のダブルトーンによる上品で繊細な作りで、「純粋に歌で勝負」という阿桑のスタンスがそこここに感じられます。

 メインナンバーの《寂寞在唱歌》はMichael Cretu(この人、プロデュース・ユニット「エニグマ」の仕掛け人ですね)が一九七九年に発表した“Moonlight Flower”のカバー。これだけ実力のある歌手なんですから、何もメインにカバー曲を持ってこなくてもと個人的には思ってしまいますが。もうひとつ、中島みゆきばり(?)に泣き声まじりで歌う《瘋了》は、Pet Shop Boysの“Mad World”のカバーです。この他にも先週ご紹介した蔡健雅(ターニャ・チュア)作曲の《保管》や、方文山(ヴィンセント・ファン)作詞による《一直很安靜》など、聴きどころがいっぱい。

 このアルバムの太っ腹なところは、さらにボーナスVCDとして《瘋了》《寂寞在唱歌》《被動》《保管》のカラオケ用MVがついていること。特に《瘋了》は、昨年公開されたオリヴィエ・アサヤス監督の映画《錯的多美麗(Clean)》の中文版主題歌になっていて、張曼玉(マギー・チャン)が主演した同作品の画面が楽しめます(台湾発売盤のみだそうなので、ご注意)。蛇足ですが、オリヴィエ・アサヤスって確か張曼玉の元ダンナさんでしたよね。(銭衝)

 オフィシャルサイトはこちら……http://www.him.com.tw/ASun/

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.03.01

■蔡健雅●独特のセンスを感じさせる安定した歌唱力■

ASIEN第237号

Amphibian 蔡健雅(ターニャ・チュア)のニュー・アルバム《Amphibian》が堅実なヒットを続けています。二月の初めに発売されたこの新作、約ひと月経つ現在でもCDショップの売り上げベストテンにとどまり、テレビなどでも収録曲が繰り返しオンエアされています。アルバムの中文タイトルは《雙棲動物》、両生類という意味。一瞬ぎょっとするようなネーミングですが、これは心が離れかけている恋人を異なる環境に適応する「両生類」に例えて、「私はあなたみたいにいろんな環境に適応できない。あなたの愛があるところでしか生きていけない」と歌うもの。なかなか個性豊かな比喩ですねえ。

 蔡健雅はシンガポール出身のシンガー・ソングライター。もともとは作曲家としてさまざまな歌手に楽曲を提供していましたが、一九九七年に自らも歌手としてデビュー。このときは英語の歌を収めたアルバムでした。その後も北京語と英語のアルバムを着実に発表し続けており、実力派歌手としてアジア全域の華人社会で人気があります。

 低音から高音まで安定した歌唱力をみせる彼女の歌声は今回も健在。物憂げな歌い方からはじけるようなサビへの変化が印象的な《假想敵》、軽やかな歌い方ながら複雑なメロディラインが「技術」を感じさせる《優先權》、とめどなく拡散するタバコの煙を彼の愛に例えた《二手煙(副流煙という意味)》など聴きごたえのある曲ばかり十一曲が収められました。それにしてもこの人の歌の題名は独特のセンスがありますね。もうひとつの聴き所は、最後に収められている《原點》。これは孫燕姿(ステファニー・スン)とのデュエットですが、二人の声の質が近いこともあって、しっくりと溶けあった見事なハーモニー。息のあったところを見せています。そういえば孫燕姿もシンガポール出身でしたね。

 このほか今回のアルバムにはボーナスVCDがついています。《雙棲動物》と《假想敵》のほか、前回のアルバムに入っていた《無底洞》と《陌生人》の合計四曲。ドラマで人気のある賀軍翔(マイク・ハー)と歐陽靖(オーヤン・ジン)が共演した《雙棲動物》と《假想敵》が話題になっています。もう一方の《無底洞》と《陌生人》は、映画《藍色大門(邦題:藍色夏恋)》の桂綸美(グイ・ルンメイ)と、《十七歳的天空》のDuncanこと周群達の共演。こちらも貴重です。(銭衝)

| | Comments (0) | TrackBack (1)

2005.02.22

■王心凌●キュートな魅力あふれるニューアルバム《Honey》■

ASIEN第236号

Honey 発売以来好調な売れ行きを見せ、歌手としてもワンランク上がった感のある前作《愛你》から約一年、王心凌(シンディ・ワン)待望の新作《Honey》が登場です。しかも前作で評判の悪かったCCCD(コピー・コントロールCD)のくびきからめでたく解き放たれてのリリース。いや~、めでたい。今回も前作に負けず劣らずキュートな魅力あふれる一枚に仕上がっています。

 小柄な体格で一見華奢な外見ながら、歌にダンスに元気いっぱいの王心凌。とはいえ挑みかかるようなアグレッシブさではなく、どこかコミカルで軽いテイストを大事にしているのがこの人の魅力です。アルバムのタイトルにもなっている冒頭の《Honey》は、どこか七十年代のダンスナンバー《YMCA》を思わせるようなノリのよい曲(ちょいと牽強附会?)。かわってぐっと現代的な《翹翹板》はなんとなくBoAあたりが歌いそうな曲想ですが、歌声もアレンジもずっと「小作り」。きちんと自分らしさを追求しています。

 《木馬屠城記》は映画『トロイ』に想を得たと思いきや、しかしそんな古戦場とはなんの関係もありません。「好きな人を『落城』させるのは大変だけど、でも負けないんだもんね~」というような歌詞で、心地よい脱力感に襲われます(笑)。《跳吧》は、元ネーネーズで沖縄島唄のベテラン・古謝美佐子が孫のために作った子守歌『童神』のカバー。前回のアルバムにも『亜麻色の髪の乙女』のカバーを入れていましたが、こういう曲をひとつ持ってくるのが好きなようですね。また《青春考巻》は、このアルバムの発売元であるエイベックス所属のダンスユニット・Sweetsの『虹色の永遠』のカバーです。アルバムには携帯電話用の特製ストラップつき。ちょっとキュートすぎて、男性が使うのは勇気がいりそうですが……。

Honey ところでアルバムの発売に合わせるかのように(というか、絶対合わせてるんですけど)、発売初日の二月十八日、メディアには王心凌と范植偉(ファン・ジーウェイ)の恋愛について記事が載りました。以前から恋仲の噂があった二人ですが、今回は范植偉のほうが「より一歩進んだ関係」との発言があったよし。映画《偵探(探偵)物語》がクランプアップしたばかりと伝えられる范植偉、二十五歳という節目の年を迎え、これまで以上に結婚や子供について考えるようになった、というのですが……まあこれはアルバム発売に対する范植偉からのリップ・サービス程度に捉えておくのが妥当な線なのでしょう。

 余談ですが、これまで一貫して寡黙でクールな印象でメディアへの露出度もあまり高くなかった范植偉、今回はなんとこれまでのイメージを大胆に覆す「ちりちりヘア」で周囲の度肝を抜きました。王心凌と范植偉、どちらもファンの私としては二人に向かってそれぞれ言いたいです――「それでいいのか~!?」(銭衝)

エイベックス台湾のオフィシャルサイトはこちら。
http://www.avex.com.tw/cyndi/

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.02.02

■張韶涵●透明感あふれる歌声■

ASIEN第233号

張韶涵《歐若拉》 昨年末に発売された張韶涵(アンジェラ・チャン)のセカンドアルバム《歐若拉》、今年に入っても以前売り上げは好調のようです。台湾ではテレビドラマへの出演で知られる彼女ですが、歌の実力もなかなかのもの。その透明感のある高音、どこかエキゾチックな雰囲気。ネット上には“聲音的光芒(音の光)”などという評も散見されます。

 台湾生まれでカナダ育ちという張韶涵、芸能界に入るきっかけは中國廣播公司が毎年主催する『流行之星』という歌唱コンクールでした。台湾地区とその他華僑の大きなコミュニティがある海外地区とに別れ、新人歌手の登竜門として有名なこのコンクールで、彼女はバンクーバー代表として台湾での本選に参加。見事海外部門の優勝に輝いたのです。その後は三立戲劇台の《MVP情人》や《海豚灣戀人》といったテレビドラマで一躍スターの仲間入り。いちばん行きたい場所はイタリアのヴェニスと日本、好きな食べ物は刺身という、大の日本びいきなんだそうです。

 今回のアルバムでは六人ものプロデューサーと共同でレコーディングが進められました。ソウルやファンクから、ワールドミュージックふうやロックふうまでさまざまな曲想の作品に挑戦しています。なかでも女性プロデューサーと組んだ《歐若拉》や《手心的太陽》は、彼女の神秘的なキャラクターがよく表れた作品。そう、この人はその大きな瞳と少々細すぎるんじゃないのと思えるほどのスタイルで、一種妖精のような雰囲気をたたえているんですよね。このほかに《浮雲》は柴崎コウのカバー、また潘瑋柏(ウィルバー・パン)と一緒に歌う《快樂崇拝》は韓国のTurtles(コブギ)のヒット曲、《Come On》のカバーです。

 今年になって発売されたこのアルバムの「セカンド・ロット」には、《歐若拉》や《手心的太陽》など五曲のMVが入ったボーナスDVDがついています。余文樂(ショーン・ユー)が共演した《靜不下來》なども入っていてお買い得。一方大陸発売盤には、韓国の大ヒットドラマ《大長今(邦題:宮廷女官チャングムの誓い)》の中文版主題歌《娃娃》がボーナストラックとしてついているそう。う~ん、なぜそういう微妙な「差」をつける? どうせならみんな入った統一バージョンを両岸三地で発売してほしいものです。(銭衝)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.01.25

■劉允樂●中性的で不思議な雰囲気をたたえた新人■

ASIEN第232号

劉允樂 かつて“8866”というレーベルのオーナーとして中国娃娃(ChinaDolls)などを世に送り出し、作詞家でもある許常徳(シュィ・チャンダァ)氏が新たに立ち上げたレーベル、“大無限”。このレーベルから登場した最初のアーティストが劉允樂(カルバン・リウ)。まだまだマイナーなレーベルですが、先日見かけた台湾のCDショップ大手“五大唱片”では、劉允樂のデビューアルバム《劉允樂》が、売り上げトップ20に入っていました。今年に入ってから発売さればかりのこのアルバム、なかなか好調なスタートを切っているようです。

 アルバムのジャケットを見れば、その横顔が中学生に見えてしまうくらい童顔の劉允樂。ところが一九七八年台中生まれということですから、ことし二十七歳? おや、意外に歳くってます。小学校五年生まで台湾で過ごしたあと家族でカナダへ移り、UBC(ブリティッシュ・コロンビア大学)で経済学を修めたという変わった経歴の持ち主。また敬虔なクリスチャンなのだそうで、アルバムに入っている歌詞集の写真には胸に入れられた大きな十字架型のタトゥーが。自分でデザインしたというこのタトゥー、アルバム発売を記念して入れたのだそうです。ジャケットの横顔も、よく見れば耳にピアスがずらっと入ってますし、ルックスに似合わずけっこうパンキッシュなに~ちゃんのようですね。

 このアルバムに収められた十曲、いずれも自分で曲を書いてはいませんが、歌唱力はなかなかのものです。特にその外見からは意外なほど野太い声の《最後一次周禱告》や、ていねいな歌い方が好印象の《允樂》、英語のラップを披露している《I Don’t Want a Girl Like You》など、安定した歌声は単なるアイドルの範疇には収まりません。経歴からは見えてきませんが、どこで音楽を学んだんでしょうね。上述の《允樂》はウォン・ビン主演の韓国映画《My Brother(台湾での題名:來不及對你説/邦題:うちの兄貴)》の中文版主題歌にもなっています。

 オフィシャルサイトでは劉允樂自身のブログ日記も公開されています。アルバム発売以来の心情やら感慨やら、心を痛めていることなどなどがちまちまと綴られるこのブログ、ファンがコメントを書き込むこともでき、それに劉允樂自身が応えていたりして、身近な等身大のアイドルという路線を打ち出しています。ビジュアル的には中性的でどこか近寄りがたい雰囲気もあるのですが、一方では「守ってあげたい」と思わせるような線の細さを大切にしているようですね。そのせいかどうかはわかりませんが、大陸のとある携帯電話の着メロダウンロードサイトでは“女歌手”のカテゴリーに入れられちゃったりしています(笑)。(銭衝)

 オフィシャルサイトはこちら。http://www.calvinliu.net/

| | Comments (0) | TrackBack (0)

■陶喆●新たな高みを目指す二年半ぶりのニューアルバム■

ASIEN第232号

太平盛世 前作《黒色柳丁》から二年五ヶ月あまり、待望久しかった陶喆(デビッド・タオ)四枚目のアルバム《太平盛世》が登場です。《黒色柳丁》では9/11の同時多発テロに触発された曲作りもしていた陶喆ですが、そうか、もうそんなに経つのですね。年が明けてからこのかた、この新盤に対する前評判はかなりなもので、CDショップで一月十日から発売された予約盤もなかなかの売れ行きだったよう。筆者も、店頭でごっそり買い占めている人を見かけましたが、あれはどういう「筋」のかただったのでしょうねえ。

 今回のアルバム、社会や政治状況に対する陶喆の考えが前作よりも強く打ち出されているようです。アルバムタイトルは《太平盛世(太平の世)》ですが、これは「今は本当に『太平の世』なのか?」という強烈な反語であるよし。こうした危機感はメインナンバーの《鬼》に最も強く打ち出されています。“鬼”は北京語で幽霊とか「もののけ」の意。同曲のMVも映画『ゾンビ』を思わせるホラー映画的な演出となっています。とはいえ今回のアルバム、何かに挑みかかるような実験性は少々影をひそめ、より上質で落ち着いた音楽の境地を目指した姿勢が感じ取れます。

 発売の前日、一月二十日からChannel[V]で放映が始まった《愛我還是他》のMV、十分近くはあったでしょうか、最後にはタイトルロールも流れる短編映画といったおもむき。陶喆自身に加え、張藝謀〈チャン・イーモウ〉監督の映画《有話好好説》でヒロインを演じていた瞿穎(チュイ・イン)と、ファッションモデルの林可彤(リン・クートン)が競演。これは張愛玲(チャン・アイリン)の小説《紅玫瑰與白玫瑰》をシネマライズしたもので、台北と、張愛玲ですからもちろん上海が舞台に選ばれ、ロケが行われました。

 ドビュッシーの『ベルガマスク組曲』第三番『月の光』がかすかに流れる中、陶喆は三角関係のはざまで揺れる主人公を演じており、かなり激しく女性の唇を奪うシーンなど熱演を披露しています。なんでもこのシーン、NGを出すことなくたった一回でOKになったそうで、相手役の瞿穎や監督の林錦和(リン・ジンハー)も賞賛することしきりだったよう。このMVには彼女と一緒にベッドに入るシーンもありますが、こちらはそれほど「激しい」ことにはなっていません(笑)。

 さてこの四番目のアルバム、陶喆としては心機一転、前作までの三枚を「三部作」としてひとつの区切りをつけ、新たな「進歩」を目指したものだそう。もともとロックへの志向が強い陶喆ですが、今回のアルバムでは上述の《鬼》をはじめとして、中華的な音源が楽曲に深みを与える《孫子兵法》や、“狗仔隊(パパラッチ)”を皮肉ったとおぼしき《SULA與LAMPA的寓言》などロックテイストの曲がまずはいくつか。

 加えて《Angel》を彷彿とさせる《CATHERINE》や、静謐な雰囲気漂う《她的歌》など、ほっと一息つけるやさしい響きのナンバーも健在。京劇《玉堂春》の主人公・蘇三から取ったと思われる《SUSAN説》という曲では、“蘇三離了洪桐縣,將身來在大街前……”というセリフを京劇調の節回しで挿入していて、なかなかおもしろいです。“蘇三”の北京語読み“Su1san1”と「スーザン」という欧米人の名前をかけているのですね。これはもちろん、京劇の俳優でもあった母親の王復蓉(ワン・フーロン)へ捧げる一曲でしょう。また彼女のイングリッシュ・ネームは「キャサリーン」だそうですから、《CATHERINE》を母親に捧げた曲と読み解くこともできます。一方《她的歌》は英題が“SONG OF ANITA”となっていて、これは一年あまり前に亡くなった梅艶芳(アニタ・ムイ)に捧げる小品のようです。

 このアルバムは、発売元であるEMIの方針でCCCD(コピー・コントロール・CD)となっています。各社が相次いでCCCDからの撤退を表明するなか、いまだにこだわり続けるのはなぜ? 陶喆が長い充電期間を経て、すみずみにまで自らの美意識を反映させたていねいな作りのアルバムに仕上がっているだけに、そこだけがとても残念です。(銭衝)

 オフィシャルサイトはこちら。http://www.davidtao.com/

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.01.19

■張學友●ライブ盤でも色あせないクオリティの高さ■

ASIEN第231号

活出生命Live演唱會2004 昨年十月、香港でたった一日だけ行われた張學友(ジャッキー・チョン)のチャリティー・コンサート『活出生命Live演唱會2004』。その二枚組ライブCDが台湾でも発売され、さっそく聴いてみました。いやあ、これはいい!! もともと特別公演という位置づけで、普段のコンサートとは異なる趣向のこのイベント、歌われるのはその大半が他のアーティストのヒット曲。数々の名曲をジャッキーがどのように料理するのか、聴く前から期待が大きく高まります。

 ビージーズの“First of May”を洒脱に披露したあと、《但願人長久》が。言わずと知れた鄧麗君(テレサ・テン)の名曲で、王菲(フェイ・ウォン)がリバイバルヒットさせたことでも有名なこのナンバー、ジャッキーはメロディにも多少手を入れて独自色を打ち出しています。ここから范曉萱(メイビス・ファン)・孫燕姿(ステファニー・スン)・張惠妹(アーメイ)・李克勤(ハッケン・リー)・陳奕迅(イーソン・チャン)・周華健(ワーキン・チョウ)……と続く、あのスターあのアイドルのあの曲この曲。どれもがジャッキーの美しい歌声であらたな輝きが。これはなんとも贅沢です。

 いちいち挙げていくときりがありませんが、ほかにも張震嶽(チャン・チェンユェ)や張信哲(ジェフ・チャン)など、その選曲の幅広さはさすが歌唱力に絶大な自身をもつジャッキーならではと言えます。個人的にはCD-2の方に収められた周杰倫(ジェイ・チョウ)の《星晴》、陶喆(デビット・タオ)の《愛很簡單》、張國榮(レスリー・チャン)の《追》などにうなりました。ちょっと、歌がうますぎるよ、ジャッキー。もちろん《她來聽我的演唱會》や《愛是永恆》といった自身の曲も収められています。

 ライブ盤アルバムというのは、もちろんライブならではの熱気が伝わってきて独特の味わいがあるのですが、歌そのものの完成度からすれば、やはりスタジオで綿密な制作を行ったものには及ばないのが普通です。多少キーがはずれても、そこは「ご愛敬」というか……(笑)。ところがジャッキーの場合はそういう「ワキの甘さ」が皆無といってもいい。これはすごいことです。かつて彼が日本でコンサートを開いた際、その歌唱力に驚嘆した日本のあるメディアが「全華人の誇り」といった形容をしていましたが、いやまさにその通り。みなさんさぞかし鼻が高いでしょうね。

 このアルバム、ぜひともDVDがほしいところですが、CD発売から少なくとも三ヶ月は映像盤の発売はないそうです。う~ん、DVDが出たらまた買ってしまうだろうなあ。どうせなら最初から出してほしいんですけどねえ。(銭衝)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

«■王力宏●野心的なニューアルバム《心中的日月》■