« August 2004 | Main | October 2004 »

2004.09.17

■no name●前代未聞の覆面アーティスト、登場■

ASIEN第215号

“no name”どんな顔だか、ぜんぜんわかりません。シルエットはなんとなく范植偉に似ている。 今台湾でひそかに売れているアルバムがこれ。いや、すでに「ひそかに」ではありません。CDショップの棚でもベストテン入りし始めていますし、平積みにしている店も出てきました。アルバムの名前は“no name”、歌手の名前も“no name”。CDジャケットはおろか中の歌詞集に到るまで、写真は全て顔の一部か逆光ばかり。若い男性だということがわかるだけの「覆面歌手」です。台湾ポップス界のエラリー・クイーン、はたまたこれがホントの帰ってきた“無印良品”?(笑)。

 この“no name”くん、まずはなんといっても歌がうまい。なんでも2000年にコンクールで一番になって、レコード会社と契約というところまではいったのだけれど、いろいろあってチャンスを逃し、その後は兵役に就いて、つい最近除隊になったばかりなのだとか。現職はサラリーマンだそうな。う~ん、なかなかカッコいいではないですか。自分で曲作りはしていないようですが、爽やかで明るいイメージに、ほんの少しハスキーさをプラスした声で、淡々としたラブソングの数々を歌っています。

 プロデューサーは孫燕姿(スン・イェンツー)らのアルバム作りで定評のある、シンガポールの李偉菘(ポール・リー)と李偲菘(ピーター・リー)の兄弟。とにかくルックスを前面に押し出す昨今のポップス界にあって、かなり異色かつなかなかうまい売り出し方を考え出したものです。“no name”本人もサイン会などの活動はしているようで、いつまでこの覆面路線で行くのかはわかりません。が、CDショップでの売れ方を見る限り、今のところは「これは誰?」という心理も後押しして、このプロデュース方法は成功しているようです。今後二番煎じ三番煎じが登場するかもしれません。

 アルバムに収められた十曲は、伴奏もストリングス等を使ってやかましくなく、どれも洗練された雰囲気の、安心して聴ける曲ばかり。楽曲に特に強烈な印象を残すわけではないので今後は未知数ですが、匿名にして歌だけで勝負! という心意気は伝わってきます。今後が気になるアーティストがまたひとり誕生しました。(銭衝)

 こちらでちょこっとだけMVを観ることができます。
http://stars.udn.com/udnstars/Download/DLIndex.do?contID=000000002681

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.09.08

■Justin & Sophia●帰ってきた実力派兄弟デュオ■

ASIEN第214号

 台湾では珍しい実の兄妹によるデュオ・ユニット“Justin & Sophia”。ファーストアルバム『遇見未来』の売り上げも堅調なようで、レコード店でも棚の目立つ位置を占め始めています。“主打(メインナンバー)”でテレビでもMVがくり返し放映されている『殺破狼』と、アルバムのタイトルにもなっている『遇見未来』の二曲は、いずれもドラマの主題歌やエンディングテーマに選ばれました。「2004年の上半期はF.I.R(飛兒樂團)、下半期はJustin & Sophia」――そんな評が聞かれるほど、大型新人としての期待が高まっています。

 とはいえこの二人、全くの新人というわけではありません。台湾のポップスに詳しい方なら、五年ほど前にデビューして「台湾のカーペンターズ」などと評された“GoGo & MeMe”という兄妹デュオをご記憶でしょう。清新なサウンドで、ファーストアルバム『Say Forever』はかなりの売り上げを示しましたが、その後ぷっつりと音楽シーンから消息が途絶えてしまいました。今回デビューした“Justin & Sophia”が実はその二人。陳忠義(チェン・ジョンイー)と陳綺萱(チェン・チーシュェン)の兄妹です。

 2000年、日本でセカンドアルバムのMV制作をしていた“GoGo & MeMe”は、台湾で所属するレコード会社が「改編」されたという知らせを受け取りました。このあおりでスタッフのほとんどが解雇されてしまい、セカンドアルバムの制作が立ち消えになってしまったのです。その後、兄のJustinはいったん歌手としての道をあきらめ、本来の専攻である美術に打ち込み、今年修士の学位を取得しています。ただその間にも曲作りは続けており、梁詠琪(ジジ・リョン)や動力火車(パワー・ステーション)、可米小子(Comic Boyz)ら多くの歌手に楽曲を提供。孫燕姿(スン・イェンツー)の『The Moment』や張智成(ゼット・チャン)の『凌晨三點鐘』なども彼の作品です。

 一方妹のSophiaも歌手としてのトレーニングは続けており、兄の作品をデモテープにする際には必ず協力してきました。念願かなって“Justin & Sophia”として再出発した今回も、以前と同様兄の演奏に妹のボーカルというスタイルになっています。もちろんJustinもコーラスで絡み、相変わらず「カーペンターズぶり」を発揮。『殺破狼』は映画『ラスト・サムライ』にインスピレーションを得て作られたという曲。とはいえ和風というより個人的にはユーロ・エスニックという感じがしました。『遇見未来』は、全ての作詞・作曲をJustinが手がけているこのアルバムで唯一第三者の作詞によるもの。Sophiaとのハーモニーもキマっています。

 美術を専攻していたJustinのこだわりか、アルバムに添えられた歌詞集は、透明なフィルムを表紙に使用するなどなかなか凝った作り。アルバムの最初と最後についている演奏だけの楽曲も合わせ、全11曲にはどれもこの四年あまりにわたる二人の蓄積が反影されており、安心して楽しめる一枚となりました。(銭衝)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

■嘻哈高校●台南発・異色のヒップホップユニット■

ASIEN第213号

 台湾の古都・台南。そこここに南国の情緒あふれるこの街、ものの本によれば、かつて(と言ったって二年ほど前だけど)大支こと曾冠榕(DogG)などのラッパーを生んだ、台北と並ぶ台湾HipHop文化の中心地……なんだそうです。その台南から十一人のラッパーが集合したユニット・嘻哈高校(Da Skool)が登場、元気にファーストアルバムを発売しました。“嘻哈(xi1ha1)”は「ヒップホップ」の意味。ほんっっと、台湾の若者って“嘻哈”好きですねえ。

 北京語の“鬧(nao4)”と英語の“Now”をかけたこのアルバムのタイトルは“鬧嘻哈(Now! HipHop)”。テーマはズバリ“鬧”。「騒ぐ・けんかする」といった意味で、女の子をはやし立てたり退屈な時間にうっぷんをつのらせたり社会に不満をぶちまけたり恋に悩んだりと、等身大の高校生らしい「はじけぶり」です。彼らが本当に高校生なのかどうかは分かりませんが、MVで見るかぎり、思いっきり「その辺のに~ちゃん」ですから、たぶん間違いありません。

 とはいえ彼ら、地元ではけっこう知られたMCなんだそうで、歌詞も自分たちで作っています。“國語”あり台湾語あり英語あり、それにスラングや流行語やネット語(「2ちゃんねる」などで使われているような、独特な言い方ですね)も動員して言葉を遊び倒しています。ここまでベタにヒップホップのスタイルに徹すると、かえって「ダサい」ような気もしちゃうのですが、まあそこはそれ、高校生の若さに免じてってことで。現在テレビで頻繁に流れているMVはなかなか楽しい作りになっています。

 たぶんこれが“主打歌(メインナンバー)”と思われる『 Rock da House』、このメロディはどこかで聴いたことがあると思ったら、Channel[V]の名物番組『拍拍走』のオープニングで唐志中(ジェイソン・タン)と黒人(ヘイレン)こと陳建州(ブラッキー・チェン)が歌っている“兩年的辛苦後,我還在忠孝東路……”というあの歌と同じではないですか。これ、“鬧嘻哈”にもメイン・プロデューサーとして参加しているJ Wuの作曲で、嘻哈高校のために特別に提供したもの。

 このユニットがこれからどう発展していくのかは未知数ですが、この中から今後台湾の芸能界で活躍する新たな明星が生まれてくるかもしれません。彼らの名前を記憶にとどめておくことにしましょう。メンバーは、茶米・Mr.精・肥徳・聖融・家瑋・乾麺・懂伯・阿盛・Soja・大帝・炫瑞の十一名。……って、これだけじゃ何だかよく分かりませんがね(笑)。

 蛇足ながら小言をひとつ。このCD、悪名高きコピーコントロールCDですが、Windowsのパソコンで再生はできます。が、Macintoshには一切対応しないとのこと。発売元はエイベックスですが、いったい何を考えてるんですか?(銭衝)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

« August 2004 | Main | October 2004 »