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2005.01.25

■劉允樂●中性的で不思議な雰囲気をたたえた新人■

ASIEN第232号

劉允樂 かつて“8866”というレーベルのオーナーとして中国娃娃(ChinaDolls)などを世に送り出し、作詞家でもある許常徳(シュィ・チャンダァ)氏が新たに立ち上げたレーベル、“大無限”。このレーベルから登場した最初のアーティストが劉允樂(カルバン・リウ)。まだまだマイナーなレーベルですが、先日見かけた台湾のCDショップ大手“五大唱片”では、劉允樂のデビューアルバム《劉允樂》が、売り上げトップ20に入っていました。今年に入ってから発売さればかりのこのアルバム、なかなか好調なスタートを切っているようです。

 アルバムのジャケットを見れば、その横顔が中学生に見えてしまうくらい童顔の劉允樂。ところが一九七八年台中生まれということですから、ことし二十七歳? おや、意外に歳くってます。小学校五年生まで台湾で過ごしたあと家族でカナダへ移り、UBC(ブリティッシュ・コロンビア大学)で経済学を修めたという変わった経歴の持ち主。また敬虔なクリスチャンなのだそうで、アルバムに入っている歌詞集の写真には胸に入れられた大きな十字架型のタトゥーが。自分でデザインしたというこのタトゥー、アルバム発売を記念して入れたのだそうです。ジャケットの横顔も、よく見れば耳にピアスがずらっと入ってますし、ルックスに似合わずけっこうパンキッシュなに~ちゃんのようですね。

 このアルバムに収められた十曲、いずれも自分で曲を書いてはいませんが、歌唱力はなかなかのものです。特にその外見からは意外なほど野太い声の《最後一次周禱告》や、ていねいな歌い方が好印象の《允樂》、英語のラップを披露している《I Don’t Want a Girl Like You》など、安定した歌声は単なるアイドルの範疇には収まりません。経歴からは見えてきませんが、どこで音楽を学んだんでしょうね。上述の《允樂》はウォン・ビン主演の韓国映画《My Brother(台湾での題名:來不及對你説/邦題:うちの兄貴)》の中文版主題歌にもなっています。

 オフィシャルサイトでは劉允樂自身のブログ日記も公開されています。アルバム発売以来の心情やら感慨やら、心を痛めていることなどなどがちまちまと綴られるこのブログ、ファンがコメントを書き込むこともでき、それに劉允樂自身が応えていたりして、身近な等身大のアイドルという路線を打ち出しています。ビジュアル的には中性的でどこか近寄りがたい雰囲気もあるのですが、一方では「守ってあげたい」と思わせるような線の細さを大切にしているようですね。そのせいかどうかはわかりませんが、大陸のとある携帯電話の着メロダウンロードサイトでは“女歌手”のカテゴリーに入れられちゃったりしています(笑)。(銭衝)

 オフィシャルサイトはこちら。http://www.calvinliu.net/

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■陶喆●新たな高みを目指す二年半ぶりのニューアルバム■

ASIEN第232号

太平盛世 前作《黒色柳丁》から二年五ヶ月あまり、待望久しかった陶喆(デビッド・タオ)四枚目のアルバム《太平盛世》が登場です。《黒色柳丁》では9/11の同時多発テロに触発された曲作りもしていた陶喆ですが、そうか、もうそんなに経つのですね。年が明けてからこのかた、この新盤に対する前評判はかなりなもので、CDショップで一月十日から発売された予約盤もなかなかの売れ行きだったよう。筆者も、店頭でごっそり買い占めている人を見かけましたが、あれはどういう「筋」のかただったのでしょうねえ。

 今回のアルバム、社会や政治状況に対する陶喆の考えが前作よりも強く打ち出されているようです。アルバムタイトルは《太平盛世(太平の世)》ですが、これは「今は本当に『太平の世』なのか?」という強烈な反語であるよし。こうした危機感はメインナンバーの《鬼》に最も強く打ち出されています。“鬼”は北京語で幽霊とか「もののけ」の意。同曲のMVも映画『ゾンビ』を思わせるホラー映画的な演出となっています。とはいえ今回のアルバム、何かに挑みかかるような実験性は少々影をひそめ、より上質で落ち着いた音楽の境地を目指した姿勢が感じ取れます。

 発売の前日、一月二十日からChannel[V]で放映が始まった《愛我還是他》のMV、十分近くはあったでしょうか、最後にはタイトルロールも流れる短編映画といったおもむき。陶喆自身に加え、張藝謀〈チャン・イーモウ〉監督の映画《有話好好説》でヒロインを演じていた瞿穎(チュイ・イン)と、ファッションモデルの林可彤(リン・クートン)が競演。これは張愛玲(チャン・アイリン)の小説《紅玫瑰與白玫瑰》をシネマライズしたもので、台北と、張愛玲ですからもちろん上海が舞台に選ばれ、ロケが行われました。

 ドビュッシーの『ベルガマスク組曲』第三番『月の光』がかすかに流れる中、陶喆は三角関係のはざまで揺れる主人公を演じており、かなり激しく女性の唇を奪うシーンなど熱演を披露しています。なんでもこのシーン、NGを出すことなくたった一回でOKになったそうで、相手役の瞿穎や監督の林錦和(リン・ジンハー)も賞賛することしきりだったよう。このMVには彼女と一緒にベッドに入るシーンもありますが、こちらはそれほど「激しい」ことにはなっていません(笑)。

 さてこの四番目のアルバム、陶喆としては心機一転、前作までの三枚を「三部作」としてひとつの区切りをつけ、新たな「進歩」を目指したものだそう。もともとロックへの志向が強い陶喆ですが、今回のアルバムでは上述の《鬼》をはじめとして、中華的な音源が楽曲に深みを与える《孫子兵法》や、“狗仔隊(パパラッチ)”を皮肉ったとおぼしき《SULA與LAMPA的寓言》などロックテイストの曲がまずはいくつか。

 加えて《Angel》を彷彿とさせる《CATHERINE》や、静謐な雰囲気漂う《她的歌》など、ほっと一息つけるやさしい響きのナンバーも健在。京劇《玉堂春》の主人公・蘇三から取ったと思われる《SUSAN説》という曲では、“蘇三離了洪桐縣,將身來在大街前……”というセリフを京劇調の節回しで挿入していて、なかなかおもしろいです。“蘇三”の北京語読み“Su1san1”と「スーザン」という欧米人の名前をかけているのですね。これはもちろん、京劇の俳優でもあった母親の王復蓉(ワン・フーロン)へ捧げる一曲でしょう。また彼女のイングリッシュ・ネームは「キャサリーン」だそうですから、《CATHERINE》を母親に捧げた曲と読み解くこともできます。一方《她的歌》は英題が“SONG OF ANITA”となっていて、これは一年あまり前に亡くなった梅艶芳(アニタ・ムイ)に捧げる小品のようです。

 このアルバムは、発売元であるEMIの方針でCCCD(コピー・コントロール・CD)となっています。各社が相次いでCCCDからの撤退を表明するなか、いまだにこだわり続けるのはなぜ? 陶喆が長い充電期間を経て、すみずみにまで自らの美意識を反映させたていねいな作りのアルバムに仕上がっているだけに、そこだけがとても残念です。(銭衝)

 オフィシャルサイトはこちら。http://www.davidtao.com/

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2005.01.19

■張學友●ライブ盤でも色あせないクオリティの高さ■

ASIEN第231号

活出生命Live演唱會2004 昨年十月、香港でたった一日だけ行われた張學友(ジャッキー・チョン)のチャリティー・コンサート『活出生命Live演唱會2004』。その二枚組ライブCDが台湾でも発売され、さっそく聴いてみました。いやあ、これはいい!! もともと特別公演という位置づけで、普段のコンサートとは異なる趣向のこのイベント、歌われるのはその大半が他のアーティストのヒット曲。数々の名曲をジャッキーがどのように料理するのか、聴く前から期待が大きく高まります。

 ビージーズの“First of May”を洒脱に披露したあと、《但願人長久》が。言わずと知れた鄧麗君(テレサ・テン)の名曲で、王菲(フェイ・ウォン)がリバイバルヒットさせたことでも有名なこのナンバー、ジャッキーはメロディにも多少手を入れて独自色を打ち出しています。ここから范曉萱(メイビス・ファン)・孫燕姿(ステファニー・スン)・張惠妹(アーメイ)・李克勤(ハッケン・リー)・陳奕迅(イーソン・チャン)・周華健(ワーキン・チョウ)……と続く、あのスターあのアイドルのあの曲この曲。どれもがジャッキーの美しい歌声であらたな輝きが。これはなんとも贅沢です。

 いちいち挙げていくときりがありませんが、ほかにも張震嶽(チャン・チェンユェ)や張信哲(ジェフ・チャン)など、その選曲の幅広さはさすが歌唱力に絶大な自身をもつジャッキーならではと言えます。個人的にはCD-2の方に収められた周杰倫(ジェイ・チョウ)の《星晴》、陶喆(デビット・タオ)の《愛很簡單》、張國榮(レスリー・チャン)の《追》などにうなりました。ちょっと、歌がうますぎるよ、ジャッキー。もちろん《她來聽我的演唱會》や《愛是永恆》といった自身の曲も収められています。

 ライブ盤アルバムというのは、もちろんライブならではの熱気が伝わってきて独特の味わいがあるのですが、歌そのものの完成度からすれば、やはりスタジオで綿密な制作を行ったものには及ばないのが普通です。多少キーがはずれても、そこは「ご愛敬」というか……(笑)。ところがジャッキーの場合はそういう「ワキの甘さ」が皆無といってもいい。これはすごいことです。かつて彼が日本でコンサートを開いた際、その歌唱力に驚嘆した日本のあるメディアが「全華人の誇り」といった形容をしていましたが、いやまさにその通り。みなさんさぞかし鼻が高いでしょうね。

 このアルバム、ぜひともDVDがほしいところですが、CD発売から少なくとも三ヶ月は映像盤の発売はないそうです。う~ん、DVDが出たらまた買ってしまうだろうなあ。どうせなら最初から出してほしいんですけどねえ。(銭衝)

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2005.01.12

■王力宏●野心的なニューアルバム《心中的日月》■

ASIEN第230号

王力宏《心中的日月》 一九九五年のデビューアルバムから十年、ちょうど十枚目となる王力宏(ワン・リーホン)のニューアルバム、《心中的日月》が発売になりました。今回のアルバム、ジャケットを開くと“Dear listener”と題された英語のメッセージが長々と書き込まれているのに気がつきます。十年目を期に、かなり野心的なコンセプトで今回のアルバムに臨んだことがうかがえます。

 王力宏自身がテレビ番組でも解説していましたが、《心中的日月》とは理想郷と言われる「シャングリラ」のこと。ひとりの華人アーティストとして、自らが理想とする音楽がどのようなものなのかを探求する……そうした思いが込められているようです。その探求のために掲げたキーワードが“chinked-out”。彼は中華風なヒップホップ音楽といった意味合いで使っていますが、これもまたなかなか野心的な言葉。なぜなら“Chink”とはかつて西洋で使われた、中国人に対する一種の蔑称だからです。

 ここには、現在のチャイニーズポップスがともすれば西洋の模倣というレベルにとどまってしまうこと、国際的に通用する独自の音楽スタイルをまだ確立できていないのではないかという、王力宏自身の強い問題意識がうかがえます。もちろんこれまでにも中華的なテイストを加味した楽曲や、民族楽器を取り入れた演奏など様々な試みは行われています。ただそれが表面的な物珍しさレベルで終わっているのではないかということで、今回のアルバムで王力宏はさらに「中華的」とは何かを掘り下げる努力をしているのです。“chinked-out”は中華的なものに対するステレオタイプな見方を逆手に取った表現なのですね。

 まず用いられたのが“宮・商・角・徴・羽”からなる“五音”。密教の声明などでも使われる伝統的な音階です。それから大陸各地の少数民族に伝わる音楽。アルバムタイトルにもなっている《心中的日月》や《竹林深處》などでは、さまざまな民族音楽のエッセンスがサンプリングされ、取り入れられました。チベット族らしい女性の歌声や、モンゴルの倍音唱法・ホーミーに似た響きなどが渾然一体となって、独特の雰囲気をかもしだしています。日本人にもなじみが深い《草原情歌》を使った《在那遙遠的地方》も、なかなか新鮮です。

 とはいえベースはあくまでR&Bであり、ヒップホップ。いつものスタイリッシュな王力宏らしさは失われていません。これら「野心作」のほかにも、スタンダードな(野心作のあとだと、とてもフツーに聞こえてしまうんですけどね)“ForeverLove”や“一首簡單的歌”といった楽曲も収められています。世界的な規模で見たミュージック・シーンにおいて、チャイニーズポップスがいまだ「ワールド・ミュージック」「エスニック・ミュージック」というカテゴリーにとどまっていることに対する王力宏の「異議申し立て」。今回のアルバムも、今後の活躍にも目が離せません。(銭衝)

 オフィシャルサイトはこちら……http://www.sonymusic.com.tw/pop/leehom/

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■功夫●サントラは日本版がオススメ■

ASIEN第229号

功夫 いよいよ公開となった周星馳(チャウ・シンチー)待望の新作映画《功夫(邦題:カンフー・ハッスル)》。台湾では先週からの封切りにあわせて星爺以下主な出演者たちが来台し、マスコミをにぎわせました。日本でもまもなく公開がはじまるこの作品、日本版ポスターのキャッチコピーは「ありえねー。」。まさにそのとおり、CGや香港映画お得意のワイヤーワークを駆使したのはもちろんですが、エキストラや大がかりなセットにもますます力が入り、『少林サッカー』よりもっと「ありえねー」映画に仕上がっています。

 映画の公開にあわせて発売されているサウンドトラックを聴いてみました。映画で使われた楽曲はもちろん、いくつかの場面のセリフも組みこまれており、映画のさまざまなシーンがたっぷり反芻できます。二胡や琴など民族楽器を多用したフルオーケストラで演奏される、中華テイストあふれる曲目は、《劉三姐》などの大陸でかつてさかんに作られた歌劇映画(いやいや、いまでもたくさん作られていますね)を思わせます。

 またサラサーテの『ツィゴイネルワイゼン』がいきなり登場するのも星爺の映画ならでは。バイオリンの演奏法としては究極ともいえる技術を要求したこの名曲、どことなくせわしない感じがカンフーの「ありえねー」究極の技の数々になんともぴったり合っています。このほかにもカール・ダグラスが七十年代にヒットさせ、UKダンスユニットのバス・ストップがリバイバルヒットさせた『カンフー・ファイティング』や、日本人にもなじみの深いヴァン・マッコイの『ザ・ハッスル』など「カンフー・ハッスル」つながりの名曲も収められました。

 ちなみにこのサントラ、日本で発売されるバージョンには日本版『カンフー・ハッスル』のテーマソング、nobodyknows+の『シアワセナラテヲタタコウ』がボーナスとしてついてくるそう。こちらがオススメです。(銭衝)

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■信樂團●聴き所は盛りだくさんなれど……■

ASIEN第227号

信樂團《挑信》 信樂團(Shin)の最新アルバム《挑信》。先週発売になったばかりのこのアルバム、すでにCDショップなどでは売り上げのトップに上りつめ、前作《海闊天空》を凌がんばかりの勢いとなっています。それもそのはず、今回は新曲に加え、これまでの集大成とも言えるベストセレクションが加わった全二十四曲の二枚組豪華版。初めて信樂團を聴く人にとってもオススメの好企画となりました。

 プロデューサーにKeith Stuartこと司徒松を迎え、今回は新曲が五作品。Keith自身の作曲による《從今以後》は、信樂團のメンバーが親しくしている友人の結婚にあわせて作られたそうで、メンバー全員がきれいなコーラスで祝福を送っています。他に《挑釁》《帯刺的蝴蝶》《假如》《桂花巷》といった新曲が二枚のCDに別れて収められています……が、う~ん、正直に言ってこれらの新曲はちょっとインパクトに欠けるかなあ。

 いまひとつピリッとこない新曲に比べて、聴きごたえがあり、かつ信樂團らしさが楽しめるのはやはりかつてのヒットナンバーの数々。ケイト・ブッシュを思わせる高音が美しい戴愛玲(ダイ・アイリン)との共演《千年之戀》、重厚かつメロディアスなサウンドで彼らを一躍スターダムに押し上げた《海闊天空》、親友のことを歌うサビの部分がどことなくかつてのBEYONDを連想させる《天高地厚》、京劇の節回しや北京語特有の巻き舌を多用した歌い方がおもしろい《OneNight In 北京》などなど、聴き所は盛りだくさん。

 新旧の作品を集めた今回の二十四曲のうち、四曲はコリアン・ポップからの“翻唱(カバー)”。これが多いのか少ないのかは意見の分かれるところでしょう。また新曲五曲のうち四曲をはじめ、全体の三分の二が自作ではなく他のアーティストからの提供という点は、やはりアイドルではなくバンドとしての側面を打ち出しているはずのユニットとして、少々その実力を測りかねるものがあります。歌唱力はまずまずですし、個人的には好きな曲も多いんですけど……なぜだか「百パーセントオススメ」と言い切れないものを持っているんですよね、彼らは……。(銭衝)

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