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2005.01.12

■王力宏●野心的なニューアルバム《心中的日月》■

ASIEN第230号

王力宏《心中的日月》 一九九五年のデビューアルバムから十年、ちょうど十枚目となる王力宏(ワン・リーホン)のニューアルバム、《心中的日月》が発売になりました。今回のアルバム、ジャケットを開くと“Dear listener”と題された英語のメッセージが長々と書き込まれているのに気がつきます。十年目を期に、かなり野心的なコンセプトで今回のアルバムに臨んだことがうかがえます。

 王力宏自身がテレビ番組でも解説していましたが、《心中的日月》とは理想郷と言われる「シャングリラ」のこと。ひとりの華人アーティストとして、自らが理想とする音楽がどのようなものなのかを探求する……そうした思いが込められているようです。その探求のために掲げたキーワードが“chinked-out”。彼は中華風なヒップホップ音楽といった意味合いで使っていますが、これもまたなかなか野心的な言葉。なぜなら“Chink”とはかつて西洋で使われた、中国人に対する一種の蔑称だからです。

 ここには、現在のチャイニーズポップスがともすれば西洋の模倣というレベルにとどまってしまうこと、国際的に通用する独自の音楽スタイルをまだ確立できていないのではないかという、王力宏自身の強い問題意識がうかがえます。もちろんこれまでにも中華的なテイストを加味した楽曲や、民族楽器を取り入れた演奏など様々な試みは行われています。ただそれが表面的な物珍しさレベルで終わっているのではないかということで、今回のアルバムで王力宏はさらに「中華的」とは何かを掘り下げる努力をしているのです。“chinked-out”は中華的なものに対するステレオタイプな見方を逆手に取った表現なのですね。

 まず用いられたのが“宮・商・角・徴・羽”からなる“五音”。密教の声明などでも使われる伝統的な音階です。それから大陸各地の少数民族に伝わる音楽。アルバムタイトルにもなっている《心中的日月》や《竹林深處》などでは、さまざまな民族音楽のエッセンスがサンプリングされ、取り入れられました。チベット族らしい女性の歌声や、モンゴルの倍音唱法・ホーミーに似た響きなどが渾然一体となって、独特の雰囲気をかもしだしています。日本人にもなじみが深い《草原情歌》を使った《在那遙遠的地方》も、なかなか新鮮です。

 とはいえベースはあくまでR&Bであり、ヒップホップ。いつものスタイリッシュな王力宏らしさは失われていません。これら「野心作」のほかにも、スタンダードな(野心作のあとだと、とてもフツーに聞こえてしまうんですけどね)“ForeverLove”や“一首簡單的歌”といった楽曲も収められています。世界的な規模で見たミュージック・シーンにおいて、チャイニーズポップスがいまだ「ワールド・ミュージック」「エスニック・ミュージック」というカテゴリーにとどまっていることに対する王力宏の「異議申し立て」。今回のアルバムも、今後の活躍にも目が離せません。(銭衝)

 オフィシャルサイトはこちら……http://www.sonymusic.com.tw/pop/leehom/

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