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2005.04.20

■林俊傑●サードアルバム《編號 89757》は未来風■

ASIEN第243号

74 JJこと林俊傑(リン・ジュンジエ)のサードアルバム《編號 89757》を聞きました。昨年のセカンドアルバム《第二天堂》でも、《江南》をはじめとするヒット曲を数多く世に送り出したJJですが、一年を経ずして発売された今回のアルバムもハイレベルな仕上がりになっています。

 《編號 89757》というのはロボットの番号。アルバムタイトルにもなっているこの曲はウィル・スミス主演の映画『アイ、ロボット』にインスピレーションをうけて作られたとか。西暦3005年、アンドロイドがコンピュータ・ウィルスに感染し、ご主人様を愛してしまうといった設定なんだそうで。そういえばアルバムについている歌詞集の写真も、JJの眼はみな機械的なアンドロイドふう。「心を持ってしまった機械」というテーマは決して目新しいものではありませんが、そこはそれ、JJならではの音楽性の高さで聞かせてくれます。すべてが自身の作曲。歌のうまさはあいかわらずです。

 アルバムがそうしたコンセプトで貫かれているため、今回はどちらかというとかなりクールな印象の楽曲がそろっている感じがします。個人的には前作のアルバムに収められていた《豆漿油條》のようなほのぼのとした曲も好きなのですが、もともとこの人は未来的なイメージの楽曲が好きなようですね。いくつかの楽曲のテイストはファーストアルバムの《就是我》にそっくりだったり、《就是我》の一部をコラージュ的にそのまま使っていたりして、この路線は今後も頑固に追求していくのでしょう。

 他にも《盗》という曲が収められていて、これは先にレコード会社との間で発生したちょっとしたトラブルに基づいています。このトラブル、セカンドアルバムで大ヒットした《江南》を、JJ側の許可を得る前にレコード会社が自社所属の歌手にカバーさせてしまったというもの。すでに決着ははかられているようですが、海賊版を痛烈に皮肉ったとおぼしきこの曲できっちりお返ししているあたり、JJもなかなか骨がありますね。

 このアルバム、初回プレス分のみ「89757特製ネックレス」がついています。けっこうずっしりと重い金属製。私は別にいらないけど……(笑)。(銭衝)

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2005.04.14

■台湾人は年に一本しか映画を見ない?■聯合報

ASIEN第242号

 台湾で映画館に行くと、ときにロードショーが始まったばかりなのに場内に観客が数名などということもめずらしくありません。ハリウッド映画はまだしも、台湾の国産映画などは目も当てられない状況もしばしば。「これでやっていけるの?」と人ごとながら心配になってしまいます。台湾の“公平會(行政院公平交易委員會の略。日本の公正取引委員会にあたる)”が最近まとめた統計によれば、台湾人が一年間に映画館へ足を運ぶ回数は、平均で一回にも満たないそう。特に中年以降の観客動員数が極端に低いという結果が出ています。

 斜陽が叫ばれて久しい台湾の映画産業ですが、興行成績で見れば実はそれほど大きな変化はなく、ここ十年ほどは毎年二十億から二十五億元のレベルを維持しています。ただしそのうち九割以上がハリウッド映画による売り上げ。しかも映画はかつてのように幅広い世代に楽しまれる娯楽ではなくなっており、主要な観客は十八から三十五歳の青年層に限られてきたという調査結果もあります。

 台湾の映画産業には、これまで三つの波が押し寄せてきたといわれています。最初は一九六〇年代に入って本格化したテレビ放送。次は八十年代以降にビデオが登場し、それにともなって海賊版が出現したこと。そして九十年代に始まったケーブルテレビが第三の波となって映画に影響を与えました。

 もちろん、映画産業界も手をこまねいてばかりいたわけではありません。九十年代に入って、映画のリプリント数と上映館数に対する制限が緩和されたことによりショッピングセンターなどのスポットに併設される映画館が急増。昔からの映画館に取って代わる存在となりました。また、一九九八年には台北に本格的なシネコンである“華納威秀影城(ワーナービジッジ)”がオープン、初年度で百万人の観客動員を記録。その後台北だけでなく台湾各地にシネコンが登場しブームとなりましたが、それでも経営は順風満帆とは行かないようで、昨年八月には“華納威秀”の経営権が香港のゴールデンハーベストに移っています。

 ゴールデンハーベストは「マレーシア人や香港人は年平均で台湾人の二~三倍の映画を見ている。いい作品といい映画館を提供していくことで、まだまだ潜在的な発展の可能性が残されている」として台湾映画業界の今後に期待をかけています。ただ、伝統的に家族のだんらんをとても重んじるのが台湾の人たち。わざわざ映画館に出かけ時間を区切って「作品鑑賞」するより、家でソファに寝っ転がって気軽に映画を楽しみたい……そんなニーズが興行成績の頭打ちとなって現れている形です。またシネコンは既存の映画館よりチケットがかなり割高なことも課題。多くの娯楽コンテンツがひしめく現代にあって映画がどう生き残っていくのか、台湾に限りませんが、いずこも同じ問題を抱えているようです。(銭衝)

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■石康軍●デビューアルバムの「売り」はその声域の広さ■

ASIEN第241号

cover 石康軍(ジョーンズ・シー)のデビューアルバム《火光》をご紹介します。シンガポール出身の石康軍は、李偉菘(ポール・リー)と李偲菘(ピーター・リー)のもとで孫燕姿(ステファニー・スン)らと一緒に歌を学んだ「同級生」。十代の頃から、アルバイトで稼いだお金はほとんどカラオケに費やしていたという大の歌好きで、シンガポール国立テマセク理工学院で建築やデザインを学ぶかたわら、ひたすら修行に励んできたのだとか。十年近くの下積みを経て、このたびめでたくデビューとあいなりました。

ちゃらんさんからご指摘をいただきました。アルバムタイトルは《火花》ではなく《火光》です~!

 一見線の細そうなルックスながら、歌うのはなかなか力強いブリティッシュ・ロックっぽい雰囲気の楽曲。あまり自分で曲を作らないようですが、今回のアルバムに収められた多くの曲に自分で詞をつけています。彼の「売り」はその幅広い声域なんだそうで、オフィシャルサイトによれば「十九度」とか。二オクターブ半近いということですか。そのすごさになかなか実感がわきませんが、手元の資料によると、美空ひばりの『河の流れのように』がちょうど十九度の音域が必要で、ふうむなるほど確かに容易なことではなさそう。

 アルバムの最初におさめられている《愛中飛行》は、石康軍自身が敬愛する信樂團(shin)のヴォーカル・阿信(アシン)とのデュエット。またアルバムタイトルにもなっている《火光》は、得意の高音を活かしたサビが印象的です。そして《黒夜過後》は自分で作曲したナンバーで、これもファルセット(裏声)を駆使した、技術を感じさせる一曲です。ただし、アルバム全体としてはまだまだ小作りな印象。歌の実力を活かしてもっといろんな冒険をしたらいいのになあと思いました。

 アルバムには歌詞カードの他に三十ページほどのフォトアルバムがついており、石康軍が描いたスケッチが多数おさめられています。正直言ってあんまりうまくないんですけど(笑)、さすが建築を学んだだけあって、パース(遠近感)のしっかりした絵です。ちょっと「めるへんちっく」で、高校生がよく読む恋愛小説に出てくる挿絵みたい。石康軍は現在、カジュアルブランド“HANG TEN”のイメージキャラクターをつとめています。これはやはり同ブランドの広告に昨年から引き続き参加している徐若瑄(ビビアン・スー)が「ぜひ彼を使って!」と強く推薦したのだそう。そのかいもあってか、このデビューアルバム、台湾では現在売り上げで上位にランキングしています。今後の更なる飛躍に期待しましょう。(銭衝)

オフィシャルサイトはこちら……http://www.avex.com.tw/jones/
HANG TENのサイトはこちら……http://www.hangten.com.tw/

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